HubSpotでの自動振り分け・チケット管理設定ガイド

目次
フォーム/メール受信時の自動仕分けルール(スパム vs 営業/担当者)
フォーム送信やチーム宛てメールをHubSpotの会話用受信トレイに取り込むことで、問い合わせを自動でチケット化し、条件に応じて振り分けることができます。まず、HubSpotにフォームやメールのチャンネルを接続して会話受信トレイに統合します。例えば、HubSpotではフォームチャネルを接続すると、送信内容が受信トレイに会話として表示され、新規チケットも自動作成できます。同様に、Gmail/Office365の共有アドレスをチームEメールとして接続すれば、そのメールが受信トレイで全員に見えるようになります。
次に、自動振り分けルールを設定します。Sales HubまたはService Hubの有料ユーザー(Starter以上)**であれば、受信トレイの「自動割り当て」機能で、特定のユーザーやチーム、または「コンタクトオーナー」(担当者)に会話を自動配分できます。今回の条件では、以下のようにルールを設計します。
スパム条件
例えば、送信者のコンタクトが既存登録済みかつライフサイクルステージが「その他」の場合 ⇒ スパム扱いとしてチケット/会話をゴミ箱へ振り分けます。HubSpotには手動で会話(チケット)を「スパムとしてマーク」する機能がありますが、自動化するにはワークフローを活用します。具体的には、チケットワークフロー(Service Hub Professional以上で利用可能)やコンタクトワークフローを作成し、「チケットが作成されたとき」にトリガーして、関連付けられたコンタクトのライフサイクルステージが『その他』である場合に分岐し、該当チケットを「スパム」専用のパイプラインやクローズ済みステージに移動します。これにより該当チケットを即座にクローズし、オープンな対応一覧から除外できます(後述のパイプライン設定参照)。※チケットを複数パイプラインで管理するには基本的にService HubのProfessionalプランが必要です(Professionalプランでは複数のチケットパイプライン作成が可能)ので、Service Hubを導入していない場合は既存の単一パイプライン内に「スパム」ステージを用意する方法で対応します。
通常条件
上記に当てはまらない場合(コンタクトが新規、またはステージが「その他」以外) ⇒ 「営業」または「担当者(アカウント担当)】カテゴリに振り分けます。具体的には、会話受信トレイの自動割り当て設定で「コンタクトオーナーに割り当て」をONにします。これにより、既存コンタクトに担当オーナー(例えば担当営業やカスタマーサクセス)が設定されていれば、そのユーザーに会話スレッドとチケットが自動アサインされます。担当者は自分の受信トレイで直接その問い合わせを処理できるため、「担当者アカウント」カテゴリーへの自動仕分けが実現します(コンタクトオーナー=担当者へルーティング)。一方、新規コンタクト(オーナー未設定)からの問い合わせはオーナー割当ができないため営業チーム宛ての未割り当て会話として残ります。これを「営業」カテゴリ**として扱い、営業チームメンバーが受信トレイで拾って対応します。必要に応じて、受信トレイの自動割り当てオプションを「特定のユーザーやチーム」に設定し、すべての新規問い合わせを営業チームキューに振り向けることも可能です。例えば、営業チームというHubSpotチームを作成しておき、自動割り当て先をそのチームにすれば、新規の会話は全て営業チームに一括配信されます。
必要プラン
これらの会話受信トレイのルーティング機能はSales HubまたはService HubのStarter以上で利用可能です(自動割り当て先に指定できるのは有料シートを持つユーザーのみ)。ライフサイクルステージを条件に処理分岐するワークフロー機能は、Marketing Hub Professional以上(またはService Hub Professional以上)で利用できます。Marketing Hub Professionalプランにはコンタクトベースのワークフローが含まれるため、簡易的な自動化はそれで可能ですが、チケットプロパティやチケットの移動といった高度な処理を行うにはService Hub Professionalが推奨されます。
チケットのパイプライン・ステージ単位での管理
自動振り分けられたチケットは、チケットパイプラインおよびステージによって管理すると整理しやすくなります。HubSpotでは、チケットをカスタマイズしたパイプライン(案件管理ステージのようなもの)で管理できます。例えば1つのパイプライン内に「新規(未対応)」「対応中」「クローズ(完了)」「スパム」などステージを用意すれば、チケットの状況やカテゴリを一目で把握できます。受信トレイから自動作成されるチケットのデフォルトのパイプラインとステージは、受信トレイ設定で指定可能です。Professional以上のアカウントでは複数のパイプラインを作成することも可能なので(Service Hub Professionalでは複数チケットパイプライン利用可)、用途別にパイプラインを分ける運用も検討できます。例えば、「営業問い合わせ用パイプライン」「サポート用パイプライン」「スパム用パイプライン」を分けて運用すれば、それぞれのチームや目的でチケットを管理できます(複数の会話受信トレイと組み合わせる方法は後述)。Service Hubを契約していない場合でも既定の1パイプライン内でステージを増やすことは可能です。スパム振り分け用の**「スパム」ステージ**(クローズ扱い)を作成し、自動化ルールでそこにチケットを移動するようにすれば、スパムチケットを事実上ゴミ箱と同等に管理できます。
また、HubSpotにはチケットオブジェクトのプロパティとして**「チケットカテゴリー」**が用意されています。これは問い合わせの種別ラベルのように使えるドロップダウン項目で、デフォルトでは「問題」「リクエスト」などが含まれますが、任意の値(例えば「営業問い合わせ」「既存顧客対応」「スパム」等)を設定できます。ワークフローを使ってチケットカテゴリーを自動設定したり、受信トレイ上でオペレーターが手動でカテゴリーを選択することで、Gmailのラベルに近い分類も可能です。カテゴリプロパティやカスタムプロパティでチケットにタグ付けをし、一覧ビューでフィルタすることで細かな仕分け管理もできます。
必要プラン
チケットパイプラインとステージのカスタマイズ自体は全てのプランで可能です(Freeでも1つのパイプラインのステージ編集は可能)。ただし複数のチケットパイプライン作成はService HubのProfessional以上が必要になります(Starterではパイプラインは1つのみ、Professionalで複数作成が可能)。チケットカテゴリープロパティはService Hubのチケット機能で使用でき、Freeから利用可能です(ただし項目の追加編集には権限が必要)。ワークフローによる自動ステージ移動やプロパティ更新はProfessional以上のワークフロー機能が必要です。
チーム別インボックスでの仕分け
複数のチーム用受信トレイを活用すれば、問い合わせを部署別に完全分離して管理できます。HubSpotではProfessionalプラン以上で追加の受信トレイを作成可能です。たとえば「営業チーム受信トレイ」「サポート担当者受信トレイ」のようにInboxを分けておくと、それぞれのインボックス内で独立して会話とチケットを管理できます。受信トレイの新規作成は、設定 > 受信トレイ から「新しい受信トレイを作成」を選び、名前とアクセス権を設定するだけです。作成後、その受信トレイに**チャンネル(メールアドレスやフォーム等)**を接続します。例えば、「営業お問い合わせ用フォーム」を営業インボックスに接続し、「カスタマーサポート用メールアドレス(例: support@~)」をサポートインボックスに接続するといった具合です。こうすることで、各インボックスに入る時点で問い合わせの種類が分かれるため、自動振り分けの手間が軽減します。Professionalプランではユーザーやチーム単位で受信トレイへのアクセス権も制限できるので、営業インボックスは営業チームのみ閲覧可能、サポートインボックスはCSチームのみ閲覧可能、といった運用管理もできます。
ただし、同一のメールアドレスやフォームに届く問い合わせを内容に応じて別インボックスへ自動で振り替える設定は現状できません。インボックスは接続チャネル単位で振り分けられるため、チャンネルを分けずに1つの受信トレイに集約している場合は、前述の自動割り当てルールやワークフローで同じ受信トレイ内のチケットを振り分け管理する形になります(必要に応じて手動で別のインボックスへ会話スレッドを移動することも可能です)。
必要プラン
複数会話受信トレイの作成機能はSales HubまたはService HubのProfessional以上で利用できますMarketing HubのProfessionalでは受信トレイ追加権限は付きませんが、SalesまたはServiceの有料シートがあれば作成可能です)。各受信トレイへのチャネル接続(チームメールやフォームなど)は全プランで可能です。例えばMarketing Hub Starter+Sales Hub Professionalの場合、Sales Hub Proの特典として受信トレイを複数持てます。ユーザー/チーム権限によるインボックス閲覧制限もProfessionalプラン機能です。
チケットの自動生成とオーナー自動割当
チケットの自動発行は、会話受信トレイの設定で「受信した会話をサポートチケットとして扱う (Treat incoming conversations as support tickets)」オプションを有効にすると実現できます。これにより、接続されたチャンネル(メールやフォーム)経由の新規会話ごとにチケットが自動作成され、指定したチケットパイプライン・ステージに投入されます。HubSpotでは、受信トレイごとに新規チケットのパイプラインや初期ステータスを設定できます。例えば営業インボックスでは「営業パイプラインのNewステージ」、サポートインボックスでは「サポートパイプラインの未対応ステージ」など、チケットの行き先を分けておけます。
チケットオーナー(担当者)への自動割当については、基本的に前述の会話の割当ルールと連動します。デフォルトでは、受信トレイで自動割当された会話の担当と同じユーザーがチケットのオーナーとして設定されます。例えばコンタクトオーナーに自動配分した場合、そのコンタクトオーナーがチケットオーナーにもなります。別の割当方法を取りたい場合は、受信トレイ設定の「チケットオーナー」欄で変更することも可能です(会話の担当者とは別のオーナーをチケットに設定できます)。さらに高度な割当が必要なら、ワークフローでチケット作成後にオーナーを変更することもできます。例えば、「新規チケットが作成されたら営業チームメンバーにラウンドロビン配分する」ようなワークフローアクション(レコードの所有者をローテーション)を設定すれば、問い合わせ対応の負荷を均等に割り振ることもできます(※ラウンドロビン機能はSales/Service Hub Professional以上でワークフローから利用可能です)。
必要プラン
チケット自動生成機能自体は全プランで利用できます。ただしMarketing HubおよびSales Hubのみの場合、2024年以降に新規作成されたアカウントでは、会話受信トレイからのチケット自動作成機能が利用制限されている場合があります(その場合は代替として新UIの「ヘルプデスク」機能でチケット管理を行います)。Sales Hub Professionalをお持ちであれば受信トレイの自動割当を利用できるため、チケットオーナー割当も自動化可能です(Marketing Hubのみではユーザーに有料セールスシートが無い限り受信トレイの自動割当ができません)。ワークフローによるオーナー自動割当はProfessionalプラン以上で利用できます。Sales HubまたはService Hub Professionalにはワークフロー機能(レコード所有者のローテーション割当など)が含まれますし、Marketing Hub Professionalのワークフローでも簡単な割当は可能です(ただしクロスオブジェクトの詳細な制御は限定的です)。
Gmailラベルが使えない場合のHubSpot内での分類方法
ご指摘のとおり、GmailのラベルとHubSpotを連携することはできません。そのため、HubSpot内の機能で代替する必要があります。上記で説明したように、チケットのパイプライン/ステージやカテゴリー属性を活用することで、Gmailラベル相当の分類が可能です。例えば「スパム」「営業対応」「担当者対応」などのステージやカテゴリーを用意して自動設定すれば、各レコードにラベルを付ける感覚で管理できます。また、複数のチーム用受信トレイにチャネルを分割することで、受信トレイ自体を用途別のフォルダのように扱うこともできます。HubSpot上ではビューのフィルタや保存したアクティブリストを使って特定のカテゴリーの問い合わせだけを表示・管理することも容易です。
必要プラン
HubSpot内でのラベリング手法に関しては、基本的な分類機能は無料から利用可能です。例えばチケットのステータスやカテゴリーの設定・編集はFreeでも行えます。ただし、自動化して分類を振り分ける場合はProfessional以上のワークフローが必要となります。また、複数受信トレイでの運用や複数パイプラインでの分類はProfessionalプランの機能です。今回想定しているSales Hub ProfessionalおよびMarketing Hub Professionalの組み合わせであれば、上記の分類・自動化機能の大半は利用可能です(必要に応じてService Hubの追加導入でチケット機能を強化できます)。各機能に必要なプランを整理すると以下のとおりです。
会話受信トレイ & ルーティング | Sales Hub または Service Hub の Starter以上(Professionalで複数インボックス作成可) |
チケット自動作成 | 全プラン対応(Professional以上推奨。新UIではService Hubのヘルプデスク機能を利用) |
自動オーナー割当 | ales/Service Hub Starter以上(ワークフロー活用の場合はProfessional以上) |
ワークフロー自動化 | Marketing Hub, Sales Hub, Service HubいずれかのProfessional以上 |
チケットパイプライン(複数) | Service Hub Professional以上 (Starterは1パイプライン) |
チケットカテゴリー/ステータス | 全プランで利用可(Service Hub導入時に利用推奨) |
以上のように、HubSpot側の機能を組み合わせることで、問い合わせの自動振り分けや管理を柔軟に設定できます。Sales Hub ProfessionalとMarketing Hub Professionalをお使いであれば、少なくとも自動割当やワークフローによる振り分けは実現可能です。それに加えて必要に応じService HubをProfessionalで導入すれば、複数のチケットパイプライン運用やチケット系ワークフローの強化など、より細かな自動化・分類が可能となります。各プランの特典を活かし、HubSpot内で最適なスパム除外と問い合わせ分類を行ってください。