製造業中小企業におけるHubSpot導入事例と設定ポイント

目次
中小製造業においても、デジタルを活用した営業・マーケティング改革は急務となっています。特に新規問い合わせの獲得や営業効率の向上は多くの営業・マーケティング担当差にとって共通の課題でしょう。こうした課題に対し、HubSpotは強力な解決策となり得ます。本記事では、中小製造業がHubSpotを活用して新規問い合わせ獲得・営業現場の効率化・売上アップを実現させる機能や使い方ご紹介します。各施策ごとに「導入前の課題」「HubSpot活用方法」「得られた成果」「再現する手順」の順で解説します。
展示会後フォローの自動化でホットリードを逃さない
使用HubSpot機能
Marketing Hub(ワークフロー、自動メール送信)、Sales Hub(シーケンス、一斉メール)、コンタクトリスト管理、HubSpotモバイルアプリ名刺スキャン、Meetingsリンク、タスク機能など。
導入前の課題
製造業など多くの中小企業では、ウェブサイトからのリード獲得が思うように伸びず、展示会や紹介などオフライン頼みで、名刺リストやWeb問い合わせのリード管理が属人化になりがちです。従来のマーケティング施策(展示会やセミナー、SEO/SEMなど)は広く行っていても、どの施策が商談や売上につながっているか見えない状態で、サイト自体も問い合わせフォームが分かりにくく、見込み客がサイト訪問から顧客化する率(コンバージョン率)が低迷していました。コーポレートサイトをリニューアルした後にお問い合わせコンバージョン数が低下し、リード目標達成に支障が出たケースもあります。社内にWebやマーケティングの専門知識が乏しく、コンテンツも不足していたため、サイト訪問者をリード化できないことが課題でした。
導入内容と設定概要
HubSpot導入後、まず取り組んだのがインバウンドマーケティングによるコンテンツ戦略の構築です。具体的には以下のような施策を行いました。
・HubSpot活用方法
HubSpotのSalesHubのCRM(顧客管理)機能上に展示会リストや問合せリストを一元管理し、全てのリード情報を営業・マーケティングで共有し、MarketingHubのワークフロー機能を使って、展示会後のフォローメールを自動化し、来訪のお礼や資料送付を迅速に実施することで、営業担当の業務負担を著しく提言することができます。合わせて、営業担当者にはSalesHub上で自動タスクを割り当て、フォロー漏れの防止を図りました。また、リードがメール内リンクをクリックしたり自社サイトを再訪問した際にはHubSpot上のタイムラインで可視化されるため、ホットリードをリアルタイムで把握できるようになりました。これらにより、マーケ部門と営業部門が一体となって迅速にリード育成を行える体制を構築しました。
また、Content Hub CMS 上に企業ブログや製品コラムを開設し、ターゲットのペルソナが興味を持つ技術解説記事や導入事例記事を定期発信しました。例えば「○○の選定ガイド」「課題解決事例集」などのホワイトペーパー(資料)を作成し、サイト上で無料ダウンロード提供しました。HubSpot上でダウンロード用のランディングページとフォームを作成し、ユーザーが資料請求(ダウンロード)できるようにしています。
・期待できる成果
顧客行動情報の「見える化」によりマーケと営業の連携が強化され、問い合わせ対応のスピードが向上しました。特に、メール自動送信など問い合わせフォローの自動化によって対応フローを従来の半分以下に短縮でき、顧客の待ち時間を大幅に削減することに成功しています。結果としてリード管理の効率化が図られ、マーケティング施策で得た見込み客を最大限に活用できる環境が整いました。
再現する手順
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展示会リストの集約: 展示会やイベントで収集した見込み客情報をHubSpot CRMにインポートし、一元管理します。
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フォローメールの自動化: Marketing Hubのワークフロー機能で、展示会来場のお礼メールや資料送付案内メールを自動送信する仕組みを構築します。資料をダウンロードした見込み客に対して、自動でお礼メールや関連コンテンツの案内メールを送信するワークフローを設定しました。例えば、をダウンロードした人に3日後フォローアップメールを送り、さらに1週間後に関連製品の紹介メールを送る等、ステップメールで**ナーチャリング(育成)**を実施しています。これによりダウンロード後の放置を防ぎ、商談への橋渡しをスムーズにしました。
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営業タスクの割り当て: Sales Hubで営業担当者向けにフォローコールや面談設定のタスクを自動生成し、リードごとの対応状況を可視化します。
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行動トラッキング: リードがメール内リンクをクリックしたり、自社サイトを訪問した際にHubSpotが行動を記録します。これにより興味度の高いリードをリアルタイムで検知できます。
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定期的な振り返り: ダッシュボードでメール開封率や追客の成果を分析し、フォロー内容やタイミングを継続的に改善します。
・SEO強化
Content Hub上でブログ記事やランディングページを作成する際、HubSpotのSEO提案機能を活用し、適切なキーワード設定やメタデータ最適化を行いました。これにより検索流入が増加し、見込み客がサイトを訪れる母数が増えました。実際、導入企業ではWebサイト訪問者数が約2.2倍に増加しています。
・トラッキングと分析
HubSpotのトラッキングコードをサイトに埋め込み、訪問者の行動データを収集しました。どのコンテンツからコンバージョンしたかをキャンペーン分析で可視化し、効果の高い施策に注力できるようにしました。例えば、検索広告経由や特定ブログ記事経由でのコンバージョン数をダッシュボードでモニタリングし、費用対効果を測定しています。
再現時の具体的手順と注意点
中小企業でも、展示会後フォローの自動化は以下の手順で比較的簡単に実現できます。
【1】リストの迅速インポート
展示会終了後、できるだけ早く(可能なら当日夜~翌日)名刺情報をHubSpotに入力します。手作業入力ならフォーマット揺れに注意し、項目を正しくフィールドマッピングします。大量の場合はExcel整理に時間をかけすぎないよう、まず粗くても良いのでアップロードしてしまい、後から修正するくらいの意識でスピード優先します。
【2】タグ付けとセグメント
インポート時に「ソース=○○展示会」などのプロパティを設定するか、リスト機能でセグメントを作ります。これが後の自動メール送信のトリガーになります。複数イベントを扱う場合はイベント名ごとにリストを分けて管理します。
【3】フォローメールのコンテンツ準備
あらかじめ展示会フォロー用のメールテンプレートを用意しておきます。テンプレートには差し込み名前や会社名などパーソナライズ項目も設定可能です。ポイントはシンプルかつ有益な内容にすることです。長文で製品を売り込むより、感謝と「約束した資料はこちら」「ご不明点があればお気軽に」程度の記載にとどめ、押しつけがましくしないことが肝要です。また、メール内に明確な次アクション(資料リンク、相談予約リンクなど)を必ず1つ設けます。
【4】ワークフロー設定
HubSpotのワークフロー作成画面で、新規ワークフローを作成します。トリガーに「コンタクトリスト=○○展示会リストに追加された」を指定し、アクションとして「○時間後にマーケティングメール送信(先ほど用意したお礼メール)」を設定します。その後「○日待機」「条件分岐(例:メール内リンククリックしたか)」といったフローをドラッグ&ドロップで設計します。HubSpotのワークフローエディタは視覚的で、複雑なシナリオもノンプログラミングで構築可能です。例えば「メールを開かなかった人に再送」「リンクをクリックした人にはタスク作成」といった処理もGUI上で設定できます。
【5】営業連携
フォロー中や後の営業アクションについて、営業チームと事前に取り決めておきます。例えば「メール反応があったリードはインサイドセールスが翌営業日中に電話する」「一定スコア超えリードは営業に担当アサインする」等です。HubSpot内では、タスク作成アクションやオーナー割当アクションも使えるので、ワークフロー中で自動で営業担当者を割り当てたりタスク通知を送る設定もしておきます。小規模企業では営業担当=社長という場合もありますが、その場合でもHubSpotがリマインドしてくれるのでフォロー漏れ防止になります。
【6】フォロー結果の追跡
ワークフロー実行後は、HubSpotのワークフロー画面で各メールの開封率・クリック率、離脱率などをモニタリングします。必要に応じてメール内容やスケジュールをチューニングします。また、生成された商談数・受注額なども追跡し、展示会ごとのROIを評価します。これにより翌年以降どの展示会に注力すべきか意思決定の材料にもなります。
コンテンツ活用で資料請求率を向上し新規リードを創出
使用HubSpot機能
Marketing Hub(マーケティングオートメーション)、Content Hub(CMS/コンテンツ作成機能)、フォーム作成ツール、ランディングページ、CTA(Call to Action)、ブログ機能、SEOツール、分析ダッシュボード等。
導入前の課題
HubSpot MarketingHub(CMS機能)を活用し 新規案件の獲得に課題を感じている製造業の方も多いと思います。従来は紙のカタログやDMを見込み客に郵送する手法が一般的でしたが、紙媒体では開封率や反応を把握しづらく、施策効果を評価できないという課題がありました。また自社サイトも製品カタログ的な内容に留まり、商品情報が更新されるたびに経費が掛かり、見込み客が気軽に情報請求や問い合わせできる動線が不足しており、WEB経由での問合せ獲得が伸び悩むケースはよくあります。
HubSpot活用方法
HubSpot ContentHub(CMS機能)を導入すれば、自社で簡単に更新できるブログや製品活用事例ページを開設し、SEOを意識した記事コンテンツを継続的に発信したり、ターゲット顧客の関心にあわせてホワイトペーパーや技術資料を用意し、ダウンロード用フォームとランディングページを設置することができます。
また、MarketingHubのトピッククラスタ機能(MarketingHubとContentHubのProfessional以上で利用可能)を活用し、関連コンテンツ同士を内部リンクで整理して見込客が情報収集しやすいサイト構造を設計することも有用です。それらから集めたリードをHubSpot上のリストに登録し、案内メールの送付やオンラインミーティング設定を効率的に行い、見込み客との接点を増やしていくことができます。これらのコンテンツマーケティング施策により、潜在顧客が自主的に情報を入試問合せできる仕組みを整えることができます。
再現する手順
・フォローアップ用リスト作成
自社の強みやターゲットとなる企業担当者の関心を洗い出し、ブルグ記事などのコンテンツを作成します。事例紹介や技術関連情報など提供可能なコンテンツをリストアップします。
・コンテンツサイトの構築
HubSpot Content Hubのウェブサイトページ、ランディングページ、ブログ機能を用いて、社内でも更新可能なオウンドメディアを立ち上げます。顧客の解決したい課題など、顧客の知りたい情報を載せることが大切です。
・見込み客獲得の導線の整備
資料や製品カタログ、事例集などのダウンロード用のランディングページを作成し、HubSpotフォームで会社名や担当者やメールアドレス、担当者名を入力できるようにします。また、業種や会社規模などの情報を入力項目に設定することも重要です。
・継続的な情報発信
定期的にブログ記事を公開することで、情報の更新頻度も高めましょう。HubSpotのメール機能でイベント招待やフォローアップメールも自動化することができます。
・ダッシュボードでのレポートを使った効果測定
HubSpotにはコンテンツの閲覧数やフォーム送信数、ゆーざーの情報が簡単に把握できるダッシュボード機能が標準で用意されています。アナリティクスデータを見なくても担当者が簡単に現状を分析・把握し、改善に繋げられることも魅力のひとつです。
改善された成果・KPI
自動化により、展示会後のフォロー速度・成約率が飛躍的に改善しました。まず、リードフォローのリードタイムが劇的に短縮されました。前述のように1ヶ月以上かかっていた初期コンタクトが、今では ほぼ即日~数日以内 に行えるようになりました。例えばデクセリアルズ社では、マーケティング部門が行っていた問い合わせ振り分け作業をMarketing Hubのワークフローで自動化し、振り分け工程を6分の1に削減しました。その結果、お客様をお待たせする時間が大幅に短縮され、問い合わせ受付から営業担当の連絡までのタイムラグも大きく縮小しています。迅速な対応により、展示会リードの冷却を防ぎ、商談化率が向上しました(具体的数値は非公開ながら、1%程度だった商談化率が飛躍的に改善したと推測されます)。
さらに、フォロー漏れが解消しリード活用率も向上しました。自動化以前は多くが放置されていた展示会リストから、確実に複数の商談・案件が生まれるようになっています。また、フォローに要する営業・マーケ担当者の工数も削減されました。自動メールである程度絞り込みが利くため、担当者は温まったリードに注力でき、効率的です。ある事例では、マーケティング施策全体での受注金額が8倍以上に増加したとの報告もあり、展示会リードの有効活用が売上貢献につながっています。
資料請求数の増加
使用HubSpot機能: Marketing Hub(フォーム作成・埋め込み、ランディングページ、A/Bテスト、ワークフローによる自動返信メール)、Content Hub(ウェブページ・ブログ編集)、CTAボタン作成、分析(フォーム分析・コンバージョン率レポート)等。
導入前の課題
製造業の企業サイトでは「製品カタログ請求」「技術資料ダウンロード」などのフォームを設けていることがあります。しかし、フォーム送信数(資料請求数)が伸びないという悩みが多く聞かれました。原因として、フォーム項目が多すぎて入力が敬遠されている、サイト内で資料請求の導線がわかりづらい、あるいは資料そのものの魅力不足などが考えられます。また請求後の対応(資料送付やフォローメール)が手作業で、すぐ送られない・フォローしきれないといった課題もありました。導入前は月数件程度しか資料請求が来ない状況で、新規リードのパイプラインが細いという問題意識がありました。
導入内容と設定概要
HubSpot導入によって、資料請求フォームの改善とその後の対応自動化を行い、資料請求件数を増やす仕組みを構築しました。ポイントは 「見込み客が申し込みやすいフォーム設計」 と 「素早い提供・フォロー体制」 の二軸です。
・フォーム項目の最適化
まず既存の資料請求フォームを見直し、項目数を大幅に削減しました。HubSpotフォーム編集画面でドラッグ操作により項目の追加削除が可能です。必須だった詳細情報(住所や役職、検討時期など)は思い切って外し、「会社名・氏名・メールアドレス」程度の短いフォームにしました。どうしても電話番号等が必要な場合も、必須ではなく任意入力に緩和しました。「入力項目を減らすだけで問い合わせ増加が期待できる」ことは一般にも言われており、実際フォーム項目数見直しによりコンバージョン率が上がった事例が多いです。電算システム社のケースでも、テンプレートをもとに項目を取捨選択してフォームを構築し、メインフォームの項目数を定期的に点検する運用によって成果につなげています。
・フォーム配置とUX向上
資料請求フォームへの導線を強化しました。具体的にはサイトのメインナビゲーションや各製品ページに「カタログ請求」「お問い合わせ」ボタンを目立つ色で配置し、どのページからでも1クリックでフォームに到達できるようにしました。Content Hubでサイトを構築している場合、グローバルメニューにCTAを入れることも容易です。またランディングページをHubSpot上で新設し、広告やSNSから直接流入してもらう導線も作りました。フォームのUIもユーザーフレンドリーに改善しています。例えば入力時に候補が出るようなUI(HubSpotフォームは標準対応)、レスポンシブ対応でスマホでも入力しやすくする、といった配慮です。「入力所要時間:1分」などのメッセージを添えて心理的ハードルも下げました。
・即時自動返信と資料提供
資料請求が送信されたら、即座に自動返信メールを送り資料を提供しました。HubSpotワークフローを用いて、トリガー「フォーム送信=資料請求フォーム」で自動メールを顧客に送ります。メールにはダウンロード用のPDFリンクや資料添付を含め、「ご請求ありがとうございます。こちらがご希望の資料です。」といったメッセージを記載しました。以前は担当者が手動でメール添付送信しており遅延がありましたが、自動化によりユーザーは送信後すぐに資料を受け取れるようになりました。これはユーザー満足度を高めるだけでなく、営業側も即対応の手間が省けるメリットがあります。加えて、送信後のサンクスページ上でも資料をダウンロードできるボタンを表示し、メールを待たずとも入手可能なUXとしました(メールが迷惑フォルダに入るリスク対策)。
・フォローアップの自動化
資料提供後のフォローとして、数日後に「資料はご覧いただけましたか?ご質問があればお知らせください」といったフォローメールを自動送信するようにしました。これはマーケティングのワークフローまたは営業のシーケンスで対応できます。内容は押し売りにならないよう注意しつつ、追加の関連資料(例えば別製品のカタログ等)案内や、個別相談の提案を行います。こうしたステップメールにより、資料請求で終わらず商談につながる確率を高めることができます。電算システム社の事例では、資料請求フォーム改善後、このようなステップメールを活用するようになったと報告されています。
・分析と改善
HubSpotのフォーム分析機能で、フォームの閲覧数・送信数・送信率をトラッキングし始めました。例えば月次でフォーム送信率○%アップなどをKPI化し、継続的に監視します。またページごとのコンバージョン率も測定し、フォーム誘導の導線効果を評価しました。加えて、訪問から資料請求に至るまでの経路(どの流入チャネル・どのコンテンツ経由か)をキャンペーン機能で分析し、効果的な集客源の強化につなげました。検索順位向上や広告経由の流入増加によって資料請求もさらに増える好循環が生まれ、検索結果順位向上とコンバージョン増加を両立できたケースもあります。
改善された成果・KPI
れらの取り組みにより、 資料請求件数(フォーム送信数)は大幅に増加 しました。電算システム社ではHubSpot導入後1年数ヶ月で、月間コンバージョン数が300~400件規模に達したといいます。導入以前は考えられない数の見込み客情報を獲得できるようになり、マーケティング活動の裾野が広がりました。またフォーム最適化により送信率も向上しています。項目削減やUX改善の結果、同じアクセス数でも実際に送信完了する割合が高まりました。さらに、マーケティングオートメーションによる即時対応でリード満足度が向上し、その後の商談化率にも良い影響を与えています。例えばフォローメール経由で追加質問やアポ取得に繋がるケースが出始め、結果的にマーケ経由の商談・受注数が倍増したという報告もあります。Kaizen Platform社の例では、コンテンツ+MAの活用でマーケティング経由の商談数・受注数が1年で2倍以上になったとされています。これは資料請求を含むコンバージョンの増加が土台となっており、資料請求数アップが営業成果の向上に直結した形です。
再現時の具体的手順と注意点: 資料請求数を増やすための施策を中小企業が行う際は、以下のステップを参考にします。
【1】現状フォームの棚卸
まず自社サイト上の資料請求・問い合わせフォームを洗い出し、各フォームの項目、レイアウト、導線を確認します。加えて直近3~6ヶ月の送信件数を把握します。これが改善前のベースラインとなります。
【2】フォーム改善プラン策定
送信率向上のため、入力項目を減らせないか検討します。どうしても外せない項目以外は一旦外し、「検討段階で必要になったら後で聞く」くらいの発想を持ちます。またフォームの位置やデザインも見直します。例えば既存サイトの一部にしかフォーム誘導がないなら、トップページやサイドバーにも誘導リンクを追加する計画を立てます。HubSpot導入前でもこのプランニングはできます。
【3】HubSpotでフォーム実装
HubSpotに移行したら、既存サイトにフォームを埋め込むか、HubSpot上でランディングページを新規作成します。既存のウェブサイトに埋め込む場合、HubSpotのフォームを作成後に生成される埋め込みコード(もしくはWordPressプラグイン等)を使って差し替えます。HubSpotフォームに置き換えることで、送信データが自動的にCRMに蓄積されるようになります。
【4】自動返信ワークフロー設定
資料請求フォーム送信をトリガーに、先述の自動返信メールワークフローを設定します。メール本文にはダウンロードリンクやPDF添付を必ず含めます。また社名や担当者名でしっかり署名を付け、信頼性あるメールにします。ワークフローはHubSpot Starter以上で利用可能です。もしFreeプラン等の場合は、フォーム送信後に表示するサンクスページ上で直接資料リンクを渡す方法でも構いません。その場合も後続のフォローを忘れず行うようにします。
【5】フォローアップ計画
営業と相談し、資料請求後のフォロー方法を決めます。商談に直結しやすい資料なら、即営業電話も有効ですが、多くの場合は資料提供後しばらくしてからニーズ喚起の連絡をする方が効果的です。Marketing Hub Professional以上であれば、フォローメールを2通目3通目までワークフローで自動化可能です。Starterの場合は手作業になりますが、スケジュールを組んで担当者がメール送付or電話する運用を決めましょう。ポイントはタイミングで、提供から3~7日以内に1回目のフォローを行うのが目安です。あまり間隔が空きすぎると熱が冷めます。
【6】継続的なテスト
資料請求フォームについて、A/Bテストや定期的な見直しを行います。例えばランディングページの見出し違いでコンバージョン率を比較したり、フォームに「役職」項目を追加してみて影響を見るなど、小さなテストを重ね最適解を探ります。HubSpotのランディングページ機能ではA/Bテストが簡単に実施でき、勝者を自動選出することもできます。中小企業ではリソース上難しい面もありますが、四半期ごとくらいに主要フォームを点検して改善箇所がないか検討すると良いでしょう。
商談化率の向上
使用HubSpot機能: Sales Hub(CRMパイプライン管理、取引ステージ、タスク管理、シーケンス)、Marketing Hub(リードスコアリング、リスト、自動割り当て)、コンタクトのタイムライン可視化、レポート機能(商談ステージ遷移レポート)など。
導入前の課題
マーケティングで獲得したリードが営業の商談(案件)に繋がる割合、いわゆる商談化率が低迷していました。原因として、マーケと営業の連携不足やリードの質のばらつき、フォロー優先度の誤りなどがありました。例えば、マーケ部門から大量のリードが営業に渡っても、営業側で「冷たいリード」に時間を割いてしまいホットな案件を逃すという問題がありました。逆に、どのリードがホットなのか営業が把握できず勘に頼ったフォローになっていたため、せっかく育成した有望リードが埋もれてしまうこともありました。またマーケティング施策が商談・受注にどれほど寄与しているか見えないため、経営層から「投資効果がわからない」と指摘される状況でもありました。要するに、リードを商談化させる仕組みと見える化が不足していたのです。
導入内容と設定概要
HubSpotにより、リードから商談への転換プロセスを可視化・最適化し、商談化率を高める取り組みを行いました。主な内容は以下の通りです。
・CRM上での一元リード管理
HubSpot CRM上に取引パイプラインを構築し、リードから案件へのフェーズ管理を始めました。マーケ部門が提供したリードが営業に引き継がれたら、HubSpot上で「取引(Deal)」オブジェクトを作成してパイプラインに乗せます。ステージは例えば「新規リード」「アプローチ中」「商談設定」「見積提出」「受注/失注」等です。これにより各リードの進捗がひと目で分かり、どの段階で停滞しているかも把握できます。また全リードの状況を営業・マーケティング両部門で共有できるため、「進捗がブラックボックス」という状態が解消されました。
・リードスコアリングとMQL定義
前項でも触れたリードスコアを活用し、商談化しやすい見込み客を客観的指標で炙り出しました。具体的にはHubSpotのプロパティでスコアルールを設定し、累積スコアが一定以上のリードをMQL(Marketing Qualified Lead)と定義します。例えば「複数資料をダウンロード」「メールを2回以上クリック」「重要ページ(価格ページ等)閲覧」などの条件を満たしたら高スコアとなるよう設計します。これにより確度の高い見込み客が明確になり、営業はそのMQLを最優先でアプローチします。HubSpotではスコア条件を満たした時点で自動的に営業担当者へ通知メールを送ったり、取引を自動作成することも可能です。これを設定し、営業が即動ける体制を敷きました。
・インサイドセールスの活用
商談化率向上には、リードと営業の間を繋ぐ**インサイドセールス(内勤営業)の役割も導入しました。HubSpot上でリードのタイムライン(Web閲覧履歴やメール開封履歴)を確認しながら、インサイドセールスが初期接触を行います。例えば資料請求があった翌日に電話やメールでヒアリングを行い、興味度合いを確認するなどです。HubSpotのタイムライン機能で「誰がいつ自社サイトのどのページを見たか」**が営業も把握できるため、適切なタイミングでのアプローチが可能になります。実際に「問い合わせしてきた人がどんなニーズを持ち、どんな情報を探していたか」を営業とマーケが一緒に振り返る文化も生まれ、リード理解が深まりました。
・ナーチャリングと見込み醸成
スコアが足りない等、今すぐ商談にならないリードについては、マーケティング側で継続フォローします。HubSpotのワークフローや定期メール配信により、役立つ情報提供を続けました。例えば月次ニュースレターやウェビナー招待などでタッチし続け、リードが購入検討段階に進んだと判断した時点で営業に引き渡すようにしました。これにより営業が冷たいリードに労力をかけすぎず、マーケとの役割分担が明確になりました。マーケティングと営業が共通のパイプライン目標を持ち、チームで協力して商談創出する体制が整ったことも効果を発揮しました。
・レポートによるボトルネック分析
HubSpotのレポート機能で商談ステージごとの転換率を可視化しました。たとえば「MQL→SQL(営業受け入れ)→商談設定→受注」の各段階で何%が次に進むかをレポートで定期チェックします。これにより、どこにボトルネックがあるか(例:「商談設定」まで行くが受注率が低い=提案内容に課題、など)が分析できます。実際、商談数自体は微増でもコンテンツ経由の受注が2.5倍に伸びたケースでは、ペルソナ定義による質向上が大きく寄与したと分析されています。こうしたデータドリブンな改善サイクルをHubSpot上で回せるようになりました。
改善された成果・KPI
HubSpotを基盤としたリード管理とチーム連携により、 商談化率(リードから商談への転換率)が向上 しました。定量的な成果としては、Kaizen Platform社で マーケティング経由の商談数・受注数が1年で2倍 になるなど、大幅な成果向上が報告されています。特にコンテンツマーケティング経由の受注件数は2.5倍に増加し、質の高い見込み客を引き込めていると分析されています。またブイキューブ社のケースでは、インバウンドで獲得した見込み客を徹底フォローする仕組みを構築した結果、新規顧客単価が1.65倍になるなど売上面にも効果が現れています。これはマーケ・営業一体で見込み客のニーズを深く理解し対応した成果と言えます。さらに、商談化プロセスが見える化されたことで、経営層や他部署もマーケティングの貢献度を認識しやすくなり、マーケティング投資への理解が深まる効果もありました(「施策の効果が可視化され、マーケ投資効果が不透明」という批判が解消されました)。
再現時の具体的手順と注意点
中小企業が商談化率向上を再現するには、以下のステップがおすすめです。
【1】パイプライン設定
HubSpotのSales Hubで自社の営業プロセスに合った取引パイプラインを作成します。ステージを洗い出し、各ステージの定義(何をもって次ステージに進むか)を明確にします。中小企業ではステージは少なめでも構いませんが、「見込み客」「アプローチ中」「提案/見積」「受注」といった基本フェーズは設定すると良いでしょう。全営業担当者がこのステージ定義を共有し、更新を怠らないよう教育します。
【2】MQL基準の策定
マーケと営業で話し合い、「営業が追うべき良いリード」の条件を決めます。例えば「会社規模○○以上」「業種が自社主要ターゲット」「重要ページ閲覧済み」などです。これをHubSpotのリストフィルター条件やスコア条件に落とし込みます。最初は簡易ルール(例:資料請求したらMQL等)でも構いませんので決め、MQLリストに入ったら営業連絡という**SLA(サービスレベル合意)**をチーム内で設定します。
【3】スコアリング設定
HubSpotのプロパティでカスタムスコアを作成し、上記条件を点数化します。スコアリングは高度にやりすぎると複雑なので、最初は3~5個のルールから始めます。運用しながら徐々に調整していけば十分です。例えば「フォーム送信で+50」「メール開封で+5」「メールリンククリック+10」「Web訪問+1」程度に設定し、合計が一定以上でMQLとします。HubSpot Professional以上ならスコアプロパティが使用可能です。
【4】通知と割り当て
スコアやMQLリストに入ったタイミングで営業に通知するワークフローを作ります。「○○さんが資料請求しスコアXXに達しました。24時間以内にフォローしてください」といったメールを営業チームに飛ばすことで、迅速な対応を促します。Sales Hubではインボックスにある「割り当て通知」も活用し、新規リードがアサインされた際に通知が飛ぶ設定にします。
【5】商談登録と管理
営業がリードと話して「これは案件になりそうだ」と判断したら、必ずHubSpotで取引(Deal)に昇格させ、パイプラインに入れるよう徹底します。中小企業ではここが疎かになりがちですが、少人数でも全案件をHubSpotで管理する習慣をつけることが重要です。毎週の営業会議ではHubSpotのパイプライン画面を見ながら案件レビューを行うようにすると、定着しやすくなります。
【6】レポーティング
HubSpotの標準レポートやカスタムレポートを使い、「○月の新規リード数→商談化数→受注数」をモニタリングします。特にマーケ施策起点の商談数・受注数を営業起点と分けて計測すると、マーケの質改善に役立ちます。また取引ステージ遷移レポート(各ステージから次ステージへの移行率)を作成し、例えば「見込み客100件中商談化20件、受注5件」なら商談化率20%、受注率5%と把握できます。これをベースラインにボトルネック解消策を検討します(商談化率が低ければリード質orフォロー方法見直し、受注率が低ければ提案力or案件選別の課題など)。
問い合わせ対応の効率化
使用HubSpot機能
Service Hub(チケットシステム、コンタクト共有受信トレイ、ナレッジベース、チャットボット)、Marketing Hub(ワークフローによる担当割り当て、自動返信)、Sales Hub(スニペット・テンプレート、チャット対応)など。
導入前の課題
お客様からの問い合わせ対応に多くの時間が割かれ、対応漏れや属人化も発生していました。製造業BtoBでは、ウェブサイトの問い合わせフォームや電話経由で技術的な質問や見積依頼が来ます。導入前は、問い合わせメールが営業担当者個人宛てに届き、その人が不在だと返信が遅れる、といったケースがありました。またマーケ部門が一旦内容を確認してから担当営業に転送するフローだったため、内部での振り分けに時間がかかる問題がありました。結果として、お客様をお待たせしたり、最悪問い合わせが放置されるミスも起きていました。さらに対応履歴が個人のメールボックスに閉じてしまい、チームで共有されないため属人化が進んでいました。
導入内容と設定概要
HubSpot導入後はService Hubの機能も活用して、問い合わせ対応フローを整備・自動化しました。その概要は以下の通りです。
・共有受信トレイの活用
HubSpot Service Hubのコンタクト受信トレイ機能を使い、問い合わせフォーム経由のメールやチャットを一元管理しました。具体的には、自社サイトの問い合わせフォームをHubSpotフォームに置き換え、送信先を共有受信トレイ(例えばsupport@会社.com)に設定します。こうすることで、問い合わせが入るとチーム全員が見られる受信箱にスレッドが作成されます。担当者はそのスレッドを自分に割り当てて返信しますが、他のメンバーも内容を閲覧・フォロー可能です。これにより**「担当者しか分からない」属人化が解消**され、誰が対応中かも一目瞭然になります。
・ケットシステムの導入
問い合わせごとにHubSpotの**チケット(問い合わせ案件)を自動作成し、進捗管理を始めました。問い合わせフォーム送信をトリガーにチケットを開く設定が可能で、各チケットには優先度やステータス(新規・対応中・完了)を付与します。例えば「技術質問」「見積依頼」などカテゴリ分けもし、緊急度に応じてSLA(初回返信何時間以内など)**も設定しました。中小企業でもシンプルなチケットパイプラインを作ることで、対応漏れなくクローズできる体制ができます。
・自動振り分けと通知
マーケ経由で手動転送していた振り分け作業を、HubSpotのワークフローで自動化しました。問い合わせフォームに「お問い合わせ種別」や「地域」といった選択項目を追加し、それに応じて担当者に自動割り当てするルールを設定しました(例えば「技術的な質問→技術担当Aさん」「見積依頼→営業マネージャーBさん」など)。HubSpotワークフローの「オーナー割り当て」アクションや「チケット割り当て」アクションを用い、さらに担当者へはリアルタイム通知(メールまたは携帯アプリ通知)を飛ばします。デクセリアルズ社では、このMA(Marketing Hub)のワークフロー導入により問い合わせ振り分けのステップを6分の1に簡略化することに成功しました。誰に振るかを考える手間がなくなり、自動で正しく配分されます。
・自動返信・ボット
ユーザーがフォーム送信した際、即時に自動返信メールを返すようにしました。「お問い合わせありがとうございます。ただいま受付いたしました。通常1営業日以内に回答いたします。」等の内容で、問い合わせが正常に届いた安心感を与えます。これはHubSpotのフォーム設定で簡単に実装できます。また営業時間外の対応強化として、チャットボットも導入検討しました。Service Hubのボット機能で、サイト上にチャットを表示し、よくある質問に自動応答させたり、担当者不在時に問い合わせ内容と連絡先を預かるフローを設定できます。これにより24時間体制で一次対応可能となり、お客様を待たせません。チャットボットで取得した情報はそのままコンタクトやチケットに記録され、後続対応に引き継がれます。
・対応テンプレート・ナレッジベース
よくある問い合わせには回答テンプレートを用意しました。HubSpotのスニペット(定型文)やテンプレート機能を使い、問い合わせ内容に応じた回答例を登録しておきます。例えば「カタログ送付希望」には送付案内の定型文+担当者情報をすぐ呼び出せるようにし、数クリックで返信完了できるようにしました。加えて、社内の技術情報を蓄積するナレッジベースも整備し始めました。Service Hubのナレッジベース機能でFAQ記事を作成し、顧客が自己解決できる記事を公開します。これによって問い合わせ件数そのものを削減する効果も狙えます。問い合わせフォーム送信前によくある質問へのリンクを表示し、自己解決率を高める工夫も取り入れました。
改善された成果・KPI
こうした施策により、 問い合わせ対応のスピードと効率が飛躍的に向上 しました。まず振り分け作業の自動化で内部処理時間が大幅短縮され、顧客への初動レスポンスが早くなりました。デクセリアルズ社では問い合わせ対応フローの工数が6分の1に圧縮され、お客様をお待たせする時間が劇的に短縮できたと報告されています。実際、マーケティング部門の工数削減と営業から顧客への返信までのタイムラグ短縮を同時に実現しています。これにより顧客満足度(返信の速さに対する評価)が向上し、信頼構築にもつながりました。
また対応漏れゼロを達成し、問い合わせ完了率100%を維持できるようになりました(全チケットをクローズする運用の定着)。さらにチーム全員がHubSpot上で顧客対応状況を把握できるため、急な担当者不在時も他メンバーが引き継いで迅速に対応継続できています。属人化が解消したことで、人員が少ない中でも安定したカスタマーサービス提供が可能になりました。定型対応の効率化により、担当者1人あたりがこなせる問い合わせ件数も増え、対応生産性が向上しています(具体的なKPI例: 1日あたり対応件数の増加や平均初回応答時間の短縮など)。
加えて、問い合わせ内容と対応履歴がすべてCRMに蓄積されるため、マーケティングや営業活動にも活用できています。例えば過去に問い合わせ対応した内容を踏まえて営業提案したり、よくある質問をマーケティングコンテンツとして発信するなど、部門間のデータ活用が進んだ点も成果と言えます。部門横断で顧客情報を共有しやすくなり、マーケ・営業・サポートの連携強化にも寄与しました。
再現時の具体的手順と注意点
中小企業で問い合わせ対応を効率化するには、以下の手順を踏むと良いでしょう。
【1】現状フローの洗い出し
問い合わせ受付から回答までの現状フローを図に書き出します。誰がどのステップで関与し、どこに時間がかかっているかを整理します。例えば「フォーム受付→マーケ担当がメール確認→担当営業へ転送→営業回答→マーケ経由で返信」などといった流れです。この中でボトルネック(例えばマーケ担当の確認待ち)を特定します。
【2】HubSpotへの統合
すべての問い合わせをHubSpotで受けるように統一します。フォームはHubSpotフォームに統合し、電話問い合わせは極力フォーム誘導(「メールでお問い合わせください」)に変えるなどして、情報がHubSpot上に残るようにします。どうしても電話受付する場合は、受けた社員が手動でHubSpotに通話記録やメモを登録する運用を決めます。
【3】チームインボックス設定
HubSpotの設定で受信トレイを作成し、会社の問い合わせ用メールアドレスを接続します。これによりそのアドレス宛のメールがHubSpot上で見られるようになります。同時に、問い合わせフォームの送信通知先をこのアドレスに変更し、フォーム送信内容がインボックスにスレッド生成されるようにします。権限管理も行い、必要なスタッフだけがこのインボックスを閲覧できるよう調整します。
【4】チケット運用開始
Service Hubのチケットパイプラインを1つ用意し(「サポート案件」など)、フォーム送信時にチケット作成するワークフローを設定します。小規模ならステージは「新規」「対応中」「完了」だけでも十分です。問い合わせ時に自動でチケットが「新規」ででき、担当者が対応中は「対応中」、返信完了したら「完了」にする、といった運用ルールを定めチームに周知します。週次で未完了チケットを全て確認する仕組みを作れば、放置を防げます。
【5】振り分け自動化
問い合わせフォームに「お問い合わせ内容カテゴリ」をプルダウンで追加し、その値に応じてワークフローで担当者(またはチーム)を割り当てます。担当者数が少なければ単純に全問い合わせを1人が見るでも構いませんが、分業できる場合はルール化します。割り当てられた担当者に通知メールが行くようにも設定します。
【6】テンプレート作成
過去の問い合わせ返信メールを参考に、よくあるパターンの回答テンプレートをHubSpotに登録します。例えば「製品カタログ送付の案内文」「技術サポート依頼への一次回答文」などです。社内で文面チェック・承認を取り、口調やフォーマル度合いも統一します。これをスニペットやテンプレートとして営業・サポートメンバー全員が使えるようにします。
【7】ナレッジベース構築(必要に応じて)
リソースに余裕があれば、FAQを整理してHubSpotナレッジベースに記事化します。例えば「製品の仕様は〇〇です」「納期は通常△週間です」等、問い合わせが多い質問への回答をまとめます。これをウェブサイトの「よくある質問」ページとして公開し、お客様が問い合わせ前に参照できるようにします。チャットボットを使う場合は、ナレッジベース記事を参照して回答するよう設定可能なので、用意しておくと自動応答の精度が上がります。
- 注意点 - お問い合わせ対応は企業の印象を左右する重要業務です。効率化といっても機械的な対応にならないよう、人間らしいケアを忘れないようにしましょう。自動返信メールにも担当者名を入れる、返信の最後には感謝の言葉を添える等、細かな気遣いが顧客満足度を上げます。また、HubSpot導入当初は新しいツールに現場が慣れず戸惑うこともあります。段階的に導入し、「メールで対応していたのを徐々にチケットに記録するようにする」など移行期間を設けるとスムーズです。最後に、取得した問い合わせデータは営業機会の宝庫です。Service Hubで得た顧客の課題や不満は、マーケティングメッセージの改善や、新たな提案資料の作成に役立てることができます。HubSpot上で部門間の情報共有を進め、全社で顧客対応の質を高めるループを回していきましょう。 |
以上、5つの目的別にHubSpotを活用した製造業企業の導入事例と具体的な設定・運用方法を解説しました。中小製造業でも、HubSpotのSales Hub・Content Hub・Marketing Hub・Service Hubを連携して活用することで、リード創出から育成、商談化、顧客対応まで一貫した効率化と成果向上が実現可能です。各チームがお互いの情報を共有しながら、お客様志向で取り組むことで、限られたリソースでも大きな成果を上げることができるでしょう。ぜひ上述のポイントを参考に、自社で再現・カスタマイズしてみてください。各施策はHubSpotの豊富なサポートリソースやパートナー企業の支援も活用しつつ進めると、よりスムーズに定着するはずです。
参考文献・出典: 本回答ではHubSpot日本法人の公開導入事例(ブイキューブ社、デクセリアルズ社、電算システム社、Kaizen Platform社等)および関連ナレッジ資料を参照しています。各社の実績と施策から得られた知見をもとに、中小製造業でも実践可能な形にまとめています。詳しくは該当導入事例記事(HubSpot公式サイトの「導入事例」欄)もご参照ください。