中小企業の経営者や営業マネージャーにとって、顧客管理(CRM)ツールの導入は、業務の効率化と売上の拡大を実現する重要な施策です。なかでも、世界中で導入が進むHubSpotは、営業・マーケティング・サポートを一元管理できるオールインワン型のCRMプラットフォームとして非常に高く評価されています。さらに、日本国内ではCRMの導入に補助金を活用出来る例もあり、お得に導入できることも、大きな後押しになるでしょう。
この記事では、HubSpot CRMの機能や導入手順、実際の活用方法までを7つのポイントに分けてご紹介します。自社の営業体制を整備し、売上アップにつなげたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
CRMとは、見込み顧客の発掘から商談・成約、受注後の業務の流れやカスタマーサポートまで、顧客とのあらゆる接点を継続的に管理するシステムです。HubSpotはこのCRMを中心に、営業活動やマーケティング施策、カスタマーサポートの業務を統合管理できるプラットフォームを提供しています。
HubSpotでは、顧客の基本情報、取引履歴、問い合わせ対応などの記録をひとつの画面で把握できるため、チーム全員が同じ顧客情報にアクセスでき、対応のムラや抜け漏れがなくなります。部署ごとにバラバラだった管理が統一され、業務のスピードと正確性が向上します。
さらに、HubSpotは「マーケティング」「セールス」「サービス」「コンテンツ管理」「オペレーション」の5つの機能群(Hub)で構成されており、それぞれ無料・有料のプランから選べます。無料プランでも顧客管理やメール追跡など、基本的な営業活動に必要な機能が一通り使えるため、初めての導入にも最適です。直感的な操作性も魅力で、ITに不慣れな方でもすぐに使いこなせる点が多くの中小企業に支持されています。
HubSpot CRMでは、顧客個人の情報を「コンタクト」として管理します。コンタクトを分かり易く言えば顧客ひとりひとりのデータであり、氏名、会社名、電話番号、メールアドレス、連絡先といった基本情報だけでなく、過去の商談内容や問い合わせ履歴、Webサイトの閲覧履歴なども自動で紐付けられます。
特徴的なのが、「ライフサイクルステージ」の設定機能。これにより、見込み顧客なのか、商談中なのか、すでに成約済みの顧客なのかといった顧客がどの段階にあるのかという顧客の状態を(例えば「リード」「商談中」「顧客」など)ステージごとに分類できます。この分類により、営業の優先順位づけやフォローのタイミング判断がしやすくなります。このライフサイクルステージを適切に設定・更新することで、顧客が現在どの段階にあるのかをチーム全員で共有できます。
コンタクトの活用方法は、営業担当者が電話や名刺交換で得た新規の見込み客を手動入力やアプリスキャンで入力できます。また、フォーム経由の登録や、オンラインミーティングの予約、既存データのCSVインポートで一括登録することも可能です。営業メンバー間で過去のやり取りをタイムラインで確認できるため、やり取りの履歴を一目で把握できます。例えばある顧客とのやり取りを営業メンバー全員が共有できるので、「誰が最後に何を送ったか」を把握し次のアプローチに活かすことができます。
また、HubSpotでは蓄積したコンタクトを柔軟に分類・セグメント化することが可能です。例えば「業種」「地域」「購買履歴」「お問い合わせ内容」などの属性情報や行動履歴に基づいてグループ分け(セグメンテーション)し、ターゲット別のリストを作成できます。顧客セグメンテーションとは、共通の特徴を持つ顧客をグループ化するプロセスであり、これにより特定の顧客層に合ったアプローチが可能になります。HubSpotでは条件に基づくリスト作成機能(静的リスト・動的リスト)を無料で提供しており、例えば「既存顧客」「新規リード」「〇〇業界の見込み客」など条件を設定すると自動で該当コンタクトのリストが生成されます。こうして作成したリストごとにメール配信やフォローコールを行えば、適切なタイミングで適切なメッセージを届けることができます。
事例:
ある製造業の中小企業では、導入前はエクセルで顧客を管理しており、情報が担当者ごとに管理方法が異なり引き継ぎ漏れが発生していました。しかしHubSpot CRMへ移行し、全顧客をコンタクトとして一元管理するとともに、「Aランク見込み客」「Bランク既存客」など独自の顧客分類タグ(カスタムプロパティ)**を設定して運用したところ、対応漏れが激減しました。顧客の状況に応じてアプローチ方法を変えられるようになり、商談化率が向上する結果に繋がっています。このようにHubSpotでは、自社に合った分類軸で顧客データを整理し、きめ細かな対応や分析が行えるのです。
HubSpot CRM導入時に押さえておきたい基本設定(アカウント作成、パイプライン設定、フォーム・チャット・CSVアップロードなど)の手順について解説します。支援事業者のサポートがある場合でも、あらかじめ全体像を知っておくと安心であると同時に、自社に適切な設定を考えることもできます。
HubSpotのWebサイトからアカウントを新規作成し、基本情報(会社名・部署・担当者など)を登録します。アカウント開設後は、まず「ユーザーとチーム」の設定画面から、営業チームやマネージャーなどのメンバーを追加します。
各ユーザーには、必要に応じて「閲覧のみ」「編集可」「管理者権限」などの細かな権限を付与できます。たとえば、営業担当はコンタクトや商談の編集が可能にし、経営層はすべての情報を閲覧できるようにする、という具合です。また、ブランドロゴやテーマカラーを設定しておけば、社内外のレポートやメール配信時に統一感のある印象を与えられます。
次に、これまで社内で管理していた顧客データをCRMに取り込みます。HubSpotでは、CSV形式で作成した顧客リストをそのままアップロードすることができ、氏名・メールアドレス・電話番号などの項目を対応する「プロパティ」に自動マッピングして登録します。
複数の顧客情報を一括で取り込めるため、初期段階で過去の名刺データや営業リストなどを整理しておくと、スムーズにCRM運用へ移行できます。インポート後は、重複するコンタクトを自動検出してマージできるため、クリーンな状態を保ちやすいのも特長です。
HubSpotの「取引」機能では、営業活動の進捗を「パイプライン」で管理します。これは、商談が「アプローチ中」「見積提出」「交渉中」「受注」といったステージを通って進む流れを表すものです。
初期状態でも基本的なステージは用意されていますが、自社の営業プロセスに合わせて自由にカスタマイズが可能です。例えば、価格交渉が多い業種では「価格再調整」という中間ステージを追加したり、定期購入の営業であれば「継続判断待ち」といったステップを加えると運用しやすくなります。
各ステージには「成約確度(%)」も設定でき、営業予測やパイプライン全体の売上見込みを数値で把握するのにも役立ちます。
HubSpotでは、Webサイトの訪問者行動を追跡するための「トラッキングコード」を提供しています。これは、訪問者がどのページを閲覧したか、どこから流入したか、何のフォームを送信したかといった行動を記録するためのJavaScriptコードです。
設定画面から取得したコードを、自社Webサイトの全ページに貼り付けておくと、フォーム送信やチャット利用などのデータをCRM上にリアルタイムで連携できるようになります。Googleタグマネージャーを使用して簡単に設置することも可能です。
見込み顧客の情報を取得するために、HubSpotの「フォーム」機能を活用します。フォームはドラッグ&ドロップで作成でき、氏名・会社名・メールアドレスなどの入力項目を自由に追加可能です。
完成したフォームは、自社Webサイトに埋め込み、資料請求・問い合わせ・セミナー申込などに活用します。送信された情報は自動でコンタクトとして登録され、営業チームに通知されたり、自動返信メールを配信したりする設定も可能です。これにより、営業活動の入り口を整備し、Web上でのリード獲得を自動化できます。
Webサイト訪問者とリアルタイムでコミュニケーションを取る手段として、HubSpotのチャット機能も有効です。シナリオベースのチャットボットを設置すれば、資料請求や質問受付を自動化できますし、営業時間内はスタッフがライブチャットで即時対応することも可能です。
チャット経由で収集した情報はCRMにそのまま登録され、履歴として残るため、初回対応から継続的なフォローアップまで一元的に管理できます。
メール連携設定: GmailやOutlookなどのメールアカウントと接続することで、送信履歴が自動でコンタクトに記録されます。開封状況の通知やテンプレート送信も可能です。
カレンダー連携: GoogleカレンダーやOutlookカレンダーと同期することで、HubSpot内から日程調整や会議招待がスムーズに行えます。
商品カタログや見積テンプレートをあらかじめ設定しておくことで、取引ごとの書類作成がスピーディーに。チーム間の共有も簡単です。
このようにHubSpotでは、初期設定から商談管理、Webフォーム連携、チーム共有まで、営業活動に必要なすべての仕組みを一気通貫で整えることができます。
IT導入補助金を活用すれば、これらの導入支援を含む初期費用を最大3/4補助してもらえる可能性があるため、コストを抑えつつ本格的な営業DXに取り組めます。
以上がHubSpot CRM導入時の主な設定手順です。これらを適切に設定することで、顧客管理や商談管理の基盤が整い、現場でスムーズにHubSpotを活用できるようになります。IT導入補助金の支援事業者から導入支援を受ける場合も、自社のビジネスプロセスに合わせたこれら設定を行ってもらえるので、導入後すぐに実務で成果を上げやすくなるでしょう。